肉屋が天職≠フご夫婦
       〜肉の布施の取り組み〜




 肉の布施(小平支部)はこの7月11日、創業35周年を迎えた。
 肉屋が天職≠ニ言い切るご主人と、どっちが主人?と勘違いさせるほどの奥様との、元気いっぱいのお店である。




 三条から稲城へ

 今回の主人公・布施護さんは昭和20年9月に新潟県三条で生まれた。ことし還暦になる。奥様の明美さんは2つ下、東京・杉並の出身。
 護さんは高校を卒業して、東京・稲城市の肉屋に就職した。おじさんがやっているお店だった。明美さんはそのお店のまん前にある薬局で働いていた、当時のことを語る。
「あの頃は住み込みだった。料理や洗濯や、家のことを一緒に覚えた」
 そんなふたりは45年3月に結婚。永福町北口のマーケットの上のアパートで新生活が始まった。
 そのマーケットの肉屋の親方とおじさんが知り合いだったのだが、血清豚の事件でつぶれてしまったので、後を引き受けることになった。


 24歳の時、創業

 45年7月11日、護さんが24歳の時、肉の布施を創業した。
「薬屋は石鹸を扱うから手が荒れた。新婚旅行は全部絆創膏。肉屋の方がきれいでいられる」
 明美さんが振り返る。
「でもそれだから結婚したわけじゃない」
「僕が魅力」
 漫才が始まった。
 永福町で5年やってから独立することになる。


 花小金井で独立

 永住の地を求めて、花小金井か大泉学園かに絞って、結局花小金井の現在の地を決めた。
「縁があった」
「いなかですごかった。周りは全部林。都落ちと思えていやだった」
 それから30年、3人の子供が育ち、6年生を頭に4人の孫がいる。長男は旅行社を共同経営、長女は横浜の農家に嫁ぎ、次男はホテルマンとして自分の好きな道をそれぞれ進んでいる。
「みんな夢を持ってやってるし、自分達も夢がある」
 ふたりして言う。だから店はふたりだけだ。


 福が来る『福良』

 7年前に3階建てに建て替えた際、肉屋はどうあるべきか考えた。
 明美さんが京都へ旅した時に感銘を受けた創業130年のすき焼・三嶋亭のことを話し、ふたりで見学。おいしいすき焼き・しゃぶしゃぶを食べていただける場所を提供することに決めて、2階の畳の間に飛騨の家具を取り寄せた。
「最高のものを出すには、一流のものを揃えたかった」
 14人が座れる。調理場もついて、トイレもこだわった。明美さんがすべてデザインした。
 開店の頃は週末はほとんど埋まっていたが、今は明美さんが足が悪くなって、たまにしか使っていない。


 店が命でメイン

 牛肉は開店以来、全部A5だ。A5以外使ったことがない。ハンバーグもメンチもA5だ。
 豚肉は開店以来、新座豚だ。枝肉で仕入れている。モモでも霜降りがある肉だ。
 鶏肉は甲州の赤鶏と決めている。
 ウインドウにはビッシリとお肉が埋まっている。
「O―157の時も、BSEの時も、意地になって並べてた。我が家はいつも豪華な牛肉だった」
 その時は手作りのコロッケとチキンカツに救われた。
 学校給食を5校続けている。


 勉強、勉強、勉強

お客様と話が弾む

 お客様が何を求めているか≠モたりは勉強した。池袋西武の大井肉店には何年も通った。名乗り出て何が売れているか≠研究させてもらった。
 また、小平支部の小出畜産で肉の身おろしを手伝い勉強不足を痛感した。3年間、開店前と閉店後に貴重な経験をした。
 東村山支部の荒川肉店には、焼肉屋の精肉店とは違うさばき方があるのを知った。
「バラのこんなところにスジがある、とびっくりした」
 切り方やネーミングを工夫する。肩肉は硬いイメージがあるので生姜焼き用とする。また、色が少し変わったものは『きのう1000円で売ったもの』と表示してしまうと売れるようになるという。そして、昔のオーブンで作ったサンカクのローストビーフが絶品らしい。最近のオーブンでは水分を抜いてしまうと解説した。
 真空パックの発明は肉屋のノーベル賞と語る。


  「肉屋はいい商売」

光ヶ丘通り商店街は
多摩湖自転車道のそば

「若い時ステーキを切っていたら、お客さんに言われたことがある。『おにいさん、あんた牛肉がそんなにかわいいの?』
お客はこわいね。見てるから騙しちゃいけない。
 高額な商品を売るには、それだけの勉強をしなければいけない。お客も知識がある人から買いたいはずだから、なかったら失礼になる」
「郊外だから客筋が悪いかというと、そんなことはない。良いものを欲しがる人は必ずいる。駅の反対側に最近スーパーが2店オープンしたけど響かない。
 年末には『正月には布施の肉』と言ってくれる。景気が良くても悪くても定着した。」
 ふたりは力説する。
「肉屋はいい商売ですよ。生鮮3品の中では加工もきくし、やめる人が多くなったけど、他の店を見て勉強して欲しい。
ウチは残るよ。困った時にはお客さんが助けてくれるから」


花小金井若妻会
「ものすごく仲がいいの!」

  仲良し8人娘

 明美さんはこの3月、箱根へ一泊旅行をした。
 組合の小平支部1班は西武新宿線花小金井駅周辺のお店が集まっている。男性たちがよくまとまっているが、その奥さん達がものすごく仲が良くて、平成になってから毎年春に17回旅行にでかけている。
 30年前に来た時、花小金井には23軒のお肉屋があったが、どんどん減ってしまった。しかし、酒を飲む人、カラオケを歌う人、一日中しゃべる人の3組が集まって滅茶苦茶楽しい。明美さんはビール党で酒を一手に引き受けるらしい。
「好きな商売を一日でも長く続けて、色んなところへ行くのがわたし達の夢」










    〔2005年(平成17年)7月15日号「東京食肉新報」掲載〕

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