親から子へと引き継がれて     〜肉のスズキ(大田区支部)の取り組み〜

(上)池上本門寺
(下)区立池上梅園は梅が満開

 池上本門寺は、日蓮聖人が弘安5年(1282)10月13日、61歳でご入滅された霊跡として知られる。毎年10月11〜13日の3日間にわたって「お会式法要」が行なわれ、池上駅から寺を回り、また駅へ戻る『万燈練り行列』で賑わう。その帰りの道沿いに「肉のスズキ」(大田区支部)がある。親から子へと3代に肉屋が引き継がれ、2代目は今、書道の先生としても活躍している。

  創業は昭和7年

 2代目の鈴木正信さんは昭和13年11月生まれの71歳。寅年生まれの年男。
 父の政治(まさじ)さんが7年に肉屋を始めた。
 「おじいさんが宮大工で一緒にやっていたけれど、父は技量がついていかれずに、時代の流れもあって、友達の誘いで肉屋に転向したらしい」
 出身は赤坂だったが、現在地に祖父の貸し家が空いていたため、2年ほど修業にいって肉屋を開店した。
 戦争で支那に行き無事帰還して商売に復帰、それからが大変だったが、がんばった。

  父に代わって店へ

 正信さんが高校2年生の時、父が交通事故を起こして瀕死の重傷を負った。妹がひとりいただけだったので父に店を頼まれた。
 「悪いけどやってくれないか、済まないな、済まないなと言ってね」
 高校は中退した。親孝行のつもりだった。それから、寝たり起きたりの父から見よう見まねで仕事を覚えた。5年間続いた。
 37年に父は51歳の若さで亡くなった。正信さんは23歳だった。

 
 スーパー形式に改築

 店が古くなったために総2階に建て直した。間口5間・奥行4間の20坪の広いお店になったので、スーパー形式≠ノ改装した。肉以外の商品も並べた。
 39年4月に智恵子さんと結婚。水戸出身の明るい人。
 「結婚した頃が一番の華≠セった。スーパーができる前で、肉は肉屋・野菜は八百屋・魚は魚屋として、どこの商店街にもあった」

 
 2階はビリヤード

 その頃、2階はビリヤード場になっていた。台が3台おいてあった。ビリヤードが盛んな頃で、今でも『東京城南ビリヤード組合員』の看板が残っている。
 「お肉屋さんやりながら、マスターとして3、4本は続けて突ける腕前だった」
 ボーリングが出てきてすたれるまで10年くらいビリヤード会場になった。
 今、2階は大田区支部東調布地区の会場になっている。地区の定例会が毎月1回・第2木曜日に開かれる。それに総会や新年会・忘年会の写真が本紙の「支部の動き」に時々載っている。
 そして、後述のお習字の教室でもある。7人の子どもたちの作品が机の上に並んでいる。

 
 頼まれて3代目

 3代目の鈴木章雅(のりまさ)さんは昭和40年6月生まれの44歳。3人の男の子の長男坊、独身で今、花嫁募集中。
 立教大学経済学部、中央大学大学院商科を卒業して、大きな会社の会計監査の仕事につくつもりだった。ところが……
 「やってくれって頼んだ」
 2代目に言われて、3代目が誕生した。歴史は繰り返した。それまで肉には全然係わっていないし、肉の切り方もわからない。
 しかし、新装した頃、折込広告を入れたりして売れた時期には、精肉が70%・雑貨お菓子が30%の比率だったが、今では精肉は10%くらいで、主力はお弁当が70%を占めている。
 母とパートさんひとりで、すき焼き・焼肉・しょうが焼きの肉系のお弁当を手作りする。
 章雅さんはもっぱら食料品の仕入れ、お弁当の材料の仕入れ、資材の仕入れ、仕入れ担当だ。大田市場へ週2回でかけて、弁当材料の魚や野菜を買ってくる。
 朝は5時起きで弁当の仕込みもある。店は9時から7時。その間、組合の地区長の任務もある。夜11時にはダウン?



 
 書道講師で活躍

書 道
元気な小学生の習字

 大田区支部での新年会などの行事で達筆な書の看板が掲げられる。書いているのが鈴木さんだ。
 趣味が多彩で、ビリヤードが10年、釣りが10年。
 「日曜日はほとんど、東京湾の船の上にいた」
 その後に続くのが書道だ。経営していたアパートに住んでいた習字の先生に「大家さんやろうやろう」と誘われた。
 「好きでやったわけではないけれど、やってるうちにおもしろくなった」
 『習字の先生』は師匠の清水研石先生、その師匠が青山杉雨(さんう)先生。
 「書道は終わりがない。極めたらキリがない」
 号は「鈴木恵石」。謙慎書道会理事・読売書法会評議員・書道研究書学会常任理事総師範の肩書きを持つ。
 調布(土曜日)・美浜(第2・4水曜日)・カルチャーセンター講師。川崎・読売日本テレビ文化センター(第1・3木曜日)講師で教えている。
 「講師を引き受けて16年になる。生徒は休めても先生は休めない。緊張もあるから、少しくらい頭痛いのもなおってしまう」

 
 鈴木恵石作品集

 の作品は「以慈脩身」。慈を以って、身を修む。
 「最近は自己主張や権利ばかり主張することが多くなってきた。慈悲の心で世のため、人のために尽くすことが、身を修む、つまり自己完成へと導いてくれる」

 の作品は「高村光太郎『智恵子抄』あどけない話」。奥様も智恵子さん。号にも入れた。
 「わたしもだんだんそういう風になって、最後はあどけなくなりますので、はい」


「肉屋ですか? 困った」と笑う。
「でも100gピタッと切れる」と奥様が言う。
アパートの住人、女優・尾野真千子、
歌手・五島つばきを応援している。
「有名になって欲しいね」

  1年間
  無料体験


 店の2階(第1・3水曜日)と旗の台教室(第2・4木、金曜日)で「恵石書道教室」がある。
 「組合員の方で書道をやってみたい方は、一緒にやりましょう。もし体験してみたい方は、1年間無料にします」
 
電話
3751−0295





    〔2010年(平成22年)3月15日号「東京食肉新報」掲載〕

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