まじめにやってきたから 仲 郷(豊島支部)の取り組み

檜山さん、瀬下さん、和田さん、花嶋さん。
 仲郷(豊島支部)は東京メトロ有楽町線・千川駅を降りて5分、静かな住宅街の真ん中にある。自転車1台で店を始めて以来半世紀を経て、練馬区にも営業所を持ち、大きな発展を遂げてきた。

   
茨城県の出身地名


 檜山誠明さんは昭和12年3月生まれの74歳。茨城県東茨城郡七会村(現城里町)の仲郷の出身。
 「店を持つ時、大きい名前より小さい名前をと思って、生まれ育った所からつけた」
 父は3歳の時、支那事変で戦死。母は小学校2年生の終戦の年に亡くなった。
 中学を卒業すると、水戸の叔母さんの酒屋で丁稚奉公。夜、簿記とそろばんの学校に行かせてもらった。おじさんには厳しく仕込まれた。
 「この時の商売の勉強と帳面付けが、後にすごく役に立っている」

   
はたちでいざ東京へ


 はたちになって、四谷三丁目の丸善に出てきたが、売れない店だった。
 「おやじが帝国ホテルのコックをやっていたので、その知り合いの所へ白衣の下にネクタイをして回った。車を運転できたのは私だけだった」
 入った当初1日に半丸しか扱わなかったのが、2年10か月後にやめる時には毎日3頭を取り扱うまでに発展させた。
 かかっていた伝票を見て、歩どまりがいくらで骨が何グラムだからいくらで売れば良いか、自分で考えた。しかし、主人が急死してしまった。

檜山誠明・和江さん、花嶋明人・令子さん
真ん中にルンちゃん
   23歳で仲郷を創業

 23歳で独立した。資金が全くないので、早稲田にあった野中商店の夕方の忙しい2時間を手伝うことを条件に、そこの冷蔵庫を借りて注文をとって商売する、いわゆるサイトリ≠ナ『仲郷』のスタートだ。
 「自転車が1週間で駄目になった」
 その忙しい最中に和江さんと結婚。親戚の知り合いだった。10月に子どもたちが金婚式のお祝いをしてくれたばかり。
 そして始めて1年も経たないうちに、豊島区に2つの店を持った。
 長崎5丁目の店は奥さんといとこの憲一さんの3人で5年間営業した。要町3丁目では人を使って市場の中で35年間続けた。両方とも今はない。

   
昭和41年に現在地


 昭和41年、住まいと冷蔵庫・加工場を兼ねて、現在地へ来た。最初は今の半分の敷地、2回の拡張で今の形になった。移って来て45年になる。ここでは5人が働く。
 住宅地ゆえ近隣への配慮のため、騒音の出ない冷蔵器に取り替えた。
 練馬区谷原5丁目にも営業所があり、憲一さんが担当し、やはり5人が働く。昨年、道路拡張もあって全面改築したが、こちらも30年になる。

   
「バカなんだろうね」


 取り扱い数量では牛・豚が50%くらいずつ、鶏がその1割。今はもう小売りはやっていない。銀座から五反田、そして遠くは立川まで、10台の車を使って配送している。
 多い時は17人もの社員がいたが、今では半分の規模になった。
 檜山社長は社員を厚遇している。給料・ボーナスはもちろんのこと、厚生年金も加入のために昇給してまでもかけてくれる。だからみんなやめないで勤続30年以上の人が何人もいて、退職金もびっくりするほどだ。
 景気の良い時はいいが赤字を出したこともある。どうしてと尋ねると、
 「バカなんだろうね」
 営業は朝6時から夕方4時。午前中に配達、午後は作業の時間だ。
 休みは日曜・祭日、祭日休みは30年前からだ。土曜日は午前中で終わりという至れり尽くせり。

   
「まじめにやった」


 最初、1週間で駄目になった自転車。50tのカブにした。125tのベンリにも乗った。やがて250tのドリームになった。走り回りずいぶん転んだ。夜中にも走った。でもどんどん売れたから楽しかった。
 ある新しい得意先で目方を測られた。『仲郷』だけが合格だった。
 「まじめにやってきたから。悪いことはできない」
『雪の白川』。
「毎年、いなかの仲郷からたくさんの人が見に来てくれます」

   
第38回近美展開催


 上野の森美術館で終わったばかりの『第38回近美展』に、「雪の白川」の50号の絵が飾られていた。いつもは東京都美術館で開催されるが、改装のため会場が変更になった。
 檜山さんは全国で350人の会員を要する近代日本美術協会の大阪と二人いるうちの東京の副理事長。会員になって29年、副理事長になって4年目になる。
 12月17日からは1週間、大阪で開催される。

   
三女夫妻が後継ぎ


 檜山さん夫妻には3人の娘さんがいる。次女がスイスで結婚式を挙げた際、家族5人で12日間新婚旅行についていって、ヨーロッパを周ってきた楽しい想い出がある。
 三女の令子さんが花嶋さんと会社を引き継いでがんばっている。令子さんも経理を担う。同居している長女のご主人の郡司さんも手伝っている。
 お孫さんが7人いる賑やかさの中、もうひとつの趣味の盆栽に精を出す。さつきの展示会でこの5年の間に2度、都知事賞を受賞している。



    〔2011年(平成23年)12月15日号 「東京食肉新報」掲載〕


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