歌を歌うことで商売繁盛
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海老沼精肉店
(葛飾支部)
の取り組み
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「店のテントを新しくしたばかり。気を利かせて『肉』を入れてくれた。替わりに『ギター』を入れてくれと言ったら女房に叱られた」
葛飾区の堀切菖蒲園では毎年菖蒲が咲く頃菖蒲まつり≠ェ開催される。その特設舞台で「まちかどライブ」があり、まつりの最後に必ず歌うのが『堀切チャーハン』だ。平成16年発足の米屋・消防士・肉屋で編成する6人のバンド。「堀切物語」「堀切水辺公園」を持ち歌に様々なカバー曲で徐々に人が集まるようになってきた。『えびちゃん』こと肉屋の海老沼努さんがボーカルを務めている。郷ひろみや「また逢う日まで」が得意だ。
中学3年から独学で
「中学3年になる時に友達の『いちご白書をもう一度』を聞いてフォークギターのトリコになって、すぐ御茶ノ水の下倉楽器に行って買ってきて、独学で寝ずにひいて、おふくろに聞いてもらった。喜んでました」
高校では学園祭でフォークデュオとして、かぐや姫の「神田川」を歌った。その頃はバンドには興味がなかった。
大人になって初めてバンドを組んだ。米屋・消防士・肉屋が本業の6人で、リードギター・ベース・サックス・ドラム・パーカッションと『えびちゃん』のギターとボーカルの編成。職種がゴチャマゼなので『堀切チャーハン』。商店街のアマチュアバンドだ。
『えびちゃん』は「堀切物語」「堀切水辺公園」を作曲し歌っている。昭和30年代の堀切の情景が描かれた歌だ。
動画サイトのユーチューブでは「堀切物語」「堀切チャーハン」を検索すると歌声が聞かれる。
人の喜ぶ顔が見たくて
もともとは平成10年、葛飾区民コンサートで優勝、シンフォニーホールの小ホールを1日使えるごほうびをもらったことがキッカケだった。
毎年10月、「手づくり下町ライブin堀切」を開催。
また、保育園では一人で子どもたちの前で歌う。もちろんボランティアだ。
「アンパンマンのマーチ、ポーニョポニョ、マルマルモリモリも覚えた。子どもたちのために何曲覚えたかな」
偶数月の第一金曜日は市川真間のライブハウス・アルマナックハウスで定期出演している。この1月13日には奇数月にもかかわらず特別に追加公演がある。
冬枯れの堀切菖蒲園。後ろは首都高速の堀切JCT。
昭和15年創業の3代目
海老沼努さんは昭和40年11月生まれの46歳。海老沼精肉店の3代目だ。お店は京成本線・堀切菖蒲園駅から歩いて2分の所にある。祖父の正二さんが栃木県から出てきて15年に創業。ところが父の栄一さんが小学校6年生の時に正二さんは心臓病で33歳で亡くなった。当時大勢いた若いしがつないで父が2代目となったが、平成元年にやはり47歳の若さで肺がんで亡くなってしまった。努さんが23歳の時だった。
3代目の努さんは弟がひとりのふたり兄弟。いずれは絶対にお肉屋になると決めていたが、父は高校を卒業すると情報処理の専門学校へ行かせてくれた。
「2年間遊ばせてもらった」
卒業する頃に父はがんに侵されていて、すぐにお店に戻った。しかし全部自己流、問屋さんから少し教わっただけだ。
「ふたりとも痩せてたから、ちょっと違う遺伝子が入っていると思うので、大丈夫です」
大きな体で笑う。
コロッケ・メンチが評判
今一番売れているのは豚小間とカタロース。豚肉が6割。牛肉が1割。惣菜が3割になる。牛肉は芝浦のウスネから、豚肉は越谷の山崎畜産から、鶏肉は浅草のトリセンからと、ずっと同じところから仕入れている。
年末は大晦日にかけてお正月用の準備で、連日深夜までの作業となる。
「石ちゃんが来た時はコロッケが1日500個売れました。
『アド街ック天国』では歌う肉屋≠フメンチとして評判になりました。
コロッケ・メンチはどこにも負けない自信があります」
「コロッケ・メンチがうまいです」
努さんが味を決める。『黄金のレシピ』が全部頭の中に入っている。ポテトサラダのマヨネーズも自分で味をつける。焼き豚もそうだ。
「おふくろが入院した時、自分で全部やらなきゃいけない。昔と同じ味になるように考えた」
営業は11時から6時。日曜祭日が休み。
きよさんと陽子さん
海老沼きよさん、努さん、陽子さん
「おふくろがいるからですよ」
母きよさんは青森市内から東京に出て来た。5年前に喉頭がんにかかったが見事に復活して、75歳の今もコロッケ作りをしている。
奥さんの陽子さんとは先輩の勧める初めての合コンで知り合い、平成2年に結婚した。陽子さんの家もクリーニング屋さんをやっていて、自分も嫁ぐなら自営業の所と思っていた。
ふたりの子どもができた。姉の忍さんは早稲田大学の2年生。中学の時、競泳の自由形800mで全国の2位になった。弟の勲男さんは高校でラグビーをやってこの春大学受験だ。
父が亡くなってから23年が過ぎた。BSEの時の苦労は忘れることができない。それも今ようやく出口が見えてきた。
努さんの明るい人柄と歌声で、お店の人気が定着している。きよさん、陽子さんも明るくて元気で、家族の皆さんが仲良く笑顔があふれている雰囲気が一番なのだろう。
「お客様に本当に支えられて、すごく大事にされています。裏切らないようにがんばります」
〔2012年(平成24年)1月15日号 「東京食肉新報」掲載〕
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