(有)岸商店
店頭で接客をする五十嵐達雄さん。その仕事ぶりを父・康雄さん㊨が見守る
「不惑」と言われる40歳。その年齢を迎えた五十嵐達雄さんの決断も、その言葉が当てはまるようだ。19年続けてきたゲーム雑誌の編集業から、今年の春に家業の精肉店へ転身。そのために昨年、全国食肉学校(群馬県)に入学し、1年間で必要な知識と技術を身に着けた。「40歳でピカピカの1年生」の五十嵐さんの奮闘とは。
「不惑」と言われる40歳。その年齢を迎えた五十嵐達雄さんの決断も、その言葉が当てはまるようだ。19年続けてきたゲーム雑誌の編集業から、今年の春に家業の精肉店へ転身。そのために昨年、全国食肉学校(群馬県)に入学し、1年間で必要な知識と技術を身に着けた。「40歳でピカピカの1年生」の五十嵐さんの奮闘とは。
店主より一言
店舗情報
連絡先 | TEL:03-3494-0125 |
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住所 | 〒141-0031 品川区西五反田1-7-1-110 |
SNS |
店舗PR、お知らせなど
右から母・貴代子さん、五十嵐さん、康雄さん、 従業員の山本さん
祖父の代から続く家業の精肉店は、JR五反田駅前の商業一体型マンションの一角にある。好立地にあることから、お昼時には肉のおいしさが引き立つお弁当を買いに、近隣のビジネスマンが列をなす。精肉に関しても固定客が多く、地域に根差した店だ。
繁盛している店ながら「継がなければおしまい」と危機感を持った。父・康雄さんを先頭に、切り盛りしているのは4人全員60歳以上。設備も年季が入っている。今まで店を継げとはほとんど言われず、五十嵐さん本人も「まず継ぐことはない」と思ってきたが、昨年に五十嵐さんの環境は決断を迫られる状況に進んでいた。
繁盛している店ながら「継がなければおしまい」と危機感を持った。父・康雄さんを先頭に、切り盛りしているのは4人全員60歳以上。設備も年季が入っている。今まで店を継げとはほとんど言われず、五十嵐さん本人も「まず継ぐことはない」と思ってきたが、昨年に五十嵐さんの環境は決断を迫られる状況に進んでいた。
手がけたゲームの書籍を手にする五十嵐さん
最後のチャンスに
大学を卒業して初めに勤めたのはゲーム雑誌の出版社だった。やがて有志で立ち上げた新たな会社では、ゲーム雑誌『ニンテンドードリーム』の編集長に。読み物の企画、ゲーム開発者のインタビュー、事典のような厚みのある攻略本の編集など、作ったものが形になり、読者から反響がある仕事は充実感があり楽しかった。
しかしネットの普及などで、ゲーム雑誌というジャンル自体に先細り感が。加えて実家の肉屋は高齢化で、特に体力的な限界が見えてきた。何より新しいことを始めるには40歳になった今が最後のチャンスだと考え、前の仕事に未練はあったものの、店を継ぐことを決意した。
店を継ぐのに必要な食肉の知識と技術を身に着けるため、インターネットで全国食肉学校を見つけた。康雄さんからは家で教えると言われたが、仕事をしながらでは大変であろうと気遣って、あえて学校に行こうと決意した。1年間の寮生活で必要なことを全て学ぶ総合養成科に入学。牛・豚・鶏の脱骨や精肉の実技、食肉に必要な基礎知識や関連法規などの学科を習得した。中でも、食肉関連企業の社長による実践的な講義は、刺激的だった。
9月から12月は、校外実習として名古屋市の宮田精肉店へ。同店では業務用の肉が多く、短時間で大量の肉をカットすることが求められた。そのため、精肉を扱う作業は学校で習っていた時より格段に早くなり、経営の観点からも素早く数をこなす大事さを実感。実家以外の店を体験したことは大きな成長の糧となった。
社会人を経験してからの学生生活は楽しかった。会社勤めはストレスと責任が多いのに対し、学校は「純粋に勉強だけをしていればいい」ので夢中に励んだ。その結果、実技は「そこそこ」でも学科は「良かった」ことに加えて、寮での生活態度なども評価され、卒業時に成績優秀者に贈られる農水省生産局長賞を受賞した。
大学を卒業して初めに勤めたのはゲーム雑誌の出版社だった。やがて有志で立ち上げた新たな会社では、ゲーム雑誌『ニンテンドードリーム』の編集長に。読み物の企画、ゲーム開発者のインタビュー、事典のような厚みのある攻略本の編集など、作ったものが形になり、読者から反響がある仕事は充実感があり楽しかった。
しかしネットの普及などで、ゲーム雑誌というジャンル自体に先細り感が。加えて実家の肉屋は高齢化で、特に体力的な限界が見えてきた。何より新しいことを始めるには40歳になった今が最後のチャンスだと考え、前の仕事に未練はあったものの、店を継ぐことを決意した。
店を継ぐのに必要な食肉の知識と技術を身に着けるため、インターネットで全国食肉学校を見つけた。康雄さんからは家で教えると言われたが、仕事をしながらでは大変であろうと気遣って、あえて学校に行こうと決意した。1年間の寮生活で必要なことを全て学ぶ総合養成科に入学。牛・豚・鶏の脱骨や精肉の実技、食肉に必要な基礎知識や関連法規などの学科を習得した。中でも、食肉関連企業の社長による実践的な講義は、刺激的だった。
9月から12月は、校外実習として名古屋市の宮田精肉店へ。同店では業務用の肉が多く、短時間で大量の肉をカットすることが求められた。そのため、精肉を扱う作業は学校で習っていた時より格段に早くなり、経営の観点からも素早く数をこなす大事さを実感。実家以外の店を体験したことは大きな成長の糧となった。
社会人を経験してからの学生生活は楽しかった。会社勤めはストレスと責任が多いのに対し、学校は「純粋に勉強だけをしていればいい」ので夢中に励んだ。その結果、実技は「そこそこ」でも学科は「良かった」ことに加えて、寮での生活態度なども評価され、卒業時に成績優秀者に贈られる農水省生産局長賞を受賞した。
名古屋で鍛え上げたカットの腕前を実家の店で発揮する
動き出す店の改革
3月から実家の店に入った。まずは店の仕事に慣れることに集中しているが、より良くしていきたい点はいくつもある。販売方法。惣菜とお弁当メニュー。接客。「単に肉を買うだけなら、お客にとって他の店よりうちの店で買う必要はない」と、店に来てもらうだけでなく、満足してもらうには何が必要かを模索する。
まず取り組んでいるのが、手伝っている惣菜とお弁当のメニューだ。肉野菜炒め、生姜焼き、メンチカツ、コロッケなど、人気の定番メニューは多い。飲食関連のサイトにも、肉屋の肉料理だからと評判だ。しかし、客層は常連がほとんどなので、飽きられないようマンネリを防ぐには新メニューの増加が課題と見る。
また「19年間、雑誌の編集をしてきたので、その経験を売り方やアピール方法に生かしたい」と、情報発信も重視する。手掛けた毎日のお弁当は、インターネットのツイッターで写真を掲載。メニューや素材、工夫点だけでなく、五十嵐さんの近況などのコメントも添えることで、お客との距離を縮めていく。プライスカードの改良、弁当メニューの告知に使っている立て看板の有効活用、興味を引くキャッチコピーを配したポップ作り、見やすい売り場作りなど、アイデアは次々と湧く。
店の経営は「そこそこ安定」しているが、今後のことを考えると「きちんと儲けられる肉屋に」するのが課題だ。駅前の好立地や対面販売、昔ながらの枝肉仕入れ、自家製ラード作りなど、長所を生かして生き残るには、何が必要か。「夢ですけど」としたうえで、飲食店への発展も目指す。知識を生かした肉料理を出せる店へと思いを巡らすと、食肉学校の同期生の顔が浮かぶ。実家が飲食店やステーキハウスをしていたり、同じ精肉店だったり。いつか仲間たちと、理想の店へ取り組んでいくことが長期的な目標だ。
店の改革や夢を語りながらも、「その前に店の仕事に慣れて、親父を納得させなくては」と五十嵐さん。 康雄さんは「跡を継いでくれるのを頼んではいなかったので、余計うれしかった。本人が自発的に決めたことだから、何も言うことはない」と、志を持って肉塊に向かい包丁を振るう五十嵐さんへ頼もしげな眼差しを注いでいた。
【「東京食肉新報」2014年(平成26年)3月号掲載】
3月から実家の店に入った。まずは店の仕事に慣れることに集中しているが、より良くしていきたい点はいくつもある。販売方法。惣菜とお弁当メニュー。接客。「単に肉を買うだけなら、お客にとって他の店よりうちの店で買う必要はない」と、店に来てもらうだけでなく、満足してもらうには何が必要かを模索する。
まず取り組んでいるのが、手伝っている惣菜とお弁当のメニューだ。肉野菜炒め、生姜焼き、メンチカツ、コロッケなど、人気の定番メニューは多い。飲食関連のサイトにも、肉屋の肉料理だからと評判だ。しかし、客層は常連がほとんどなので、飽きられないようマンネリを防ぐには新メニューの増加が課題と見る。
また「19年間、雑誌の編集をしてきたので、その経験を売り方やアピール方法に生かしたい」と、情報発信も重視する。手掛けた毎日のお弁当は、インターネットのツイッターで写真を掲載。メニューや素材、工夫点だけでなく、五十嵐さんの近況などのコメントも添えることで、お客との距離を縮めていく。プライスカードの改良、弁当メニューの告知に使っている立て看板の有効活用、興味を引くキャッチコピーを配したポップ作り、見やすい売り場作りなど、アイデアは次々と湧く。
店の経営は「そこそこ安定」しているが、今後のことを考えると「きちんと儲けられる肉屋に」するのが課題だ。駅前の好立地や対面販売、昔ながらの枝肉仕入れ、自家製ラード作りなど、長所を生かして生き残るには、何が必要か。「夢ですけど」としたうえで、飲食店への発展も目指す。知識を生かした肉料理を出せる店へと思いを巡らすと、食肉学校の同期生の顔が浮かぶ。実家が飲食店やステーキハウスをしていたり、同じ精肉店だったり。いつか仲間たちと、理想の店へ取り組んでいくことが長期的な目標だ。
店の改革や夢を語りながらも、「その前に店の仕事に慣れて、親父を納得させなくては」と五十嵐さん。 康雄さんは「跡を継いでくれるのを頼んではいなかったので、余計うれしかった。本人が自発的に決めたことだから、何も言うことはない」と、志を持って肉塊に向かい包丁を振るう五十嵐さんへ頼もしげな眼差しを注いでいた。
【「東京食肉新報」2014年(平成26年)3月号掲載】
素材の味が生きた塩・豚肉じゃが
シンプルな塩の味付けで素材の味を楽しめる肉じゃが
牛肉たっぷり「ハッシュドビーフ」
簡単なのに、牛肉もご馳走感もたっぷり
ローストビーフ・サラダ
見た目が華やかでヘルシー感もあるのにご飯にも合うローストビーフ
骨付き豚バラのキムチ鍋
豚肉の骨から出汁が出てコクと旨味がじゃがいもに染み込むキムチ風の肉じゃが
野菜たっぷりのハンバーグシチュー
ハンバーグだけでなく、たっぷりな野菜も楽しめる煮込みシチュー
ローストチキン
クリスマスの定番。ひと手間かけて丸鶏を美味しく
ビーフかつめし
ビーフの薫り高いカツにデミグラスソースが決め手
チーズ入り鶏むね肉唐揚げ
むね肉にチーズを加えて旨味を追加したから揚げ