おいしくお肉を食べようよ！お肉屋さん紹介『肉のイチムラ』

肉のイチムラ

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昨年８月に移転した店舗とともに市村恭庸社長（左端）と従業員の皆さん

　通りを歩いていると、活気のある町であることが伝わってくる。数棟の高層マンション、大型ショッピングモール、地下鉄とゆりかもめの駅、そして豊洲市場。古い町並みを残しながらも、新しい町に生まれ変わり続けている豊洲。この町と長年歩んできた肉のイチムラ（市村恭庸社長、江東区豊洲）も、昨年に移転をして新たな歴史を刻み始めた。

店主より一言

店舗情報

営業時間	9：30～19：30　定休日：日曜日（祝日は月曜の場合のみ休み）
連絡先	TEL：03-3531-2833 FAX：03-3531-7773
住所	〒135-0061 　江東区豊洲4-6-3
URL	https://www.nikunoichimura.com/

店舗PR、お知らせなど

周辺は大型ショッピングモールや高層マンションが建ち、新しい町に変わりつつある

　「本当に良いタイミングだったんです」と、市村さんは何度も口にする。

　長年にわたり営業していた旧店舗は、ビルの老朽化のため移転を強いられた。近隣の店舗を探したが豊洲では見つからず、江東区以外の地域も模索した。昨年５月中旬の閉店期限が迫った４月末、地元の商店会の尽力で旧店舗のすぐ近くにある現在の店舗が見つかる。８月、無事にリニューアルオープンを迎えた。

　タイミングの良さは続く。地域のネットメディアで移転直後に新店舗が紹介され、常連客はもちろん高層マンションに住む新規の顧客も増加。さらに、テレビの街歩きの情報番組で豊洲が特集され、「新しい町で古くから営業している店」として魅力を取り上げられた。まるで新店舗移転を祝福しているように、お店は広く知られるこようになった。

変化し続ける町で

　お店の歩みは町の歴史とともにある。もとは石川島播磨重工業で栄えた当地は、戦後一般へ払い下げに。そこへ応募した創業者は昭和24年、一斉開業した周辺の多くの商店と同時に精肉店を開業した。

　創業者は元陸軍の衛生兵で、商売は未経験。その妻が門前仲町の精肉店で１週間の修行に出て、仕事を身に着けた。お店では、どんな部位でも小間にしてしまうという品ぞろえ。それが逆に評判となり、繁盛していった。

　当時、業者として出入りしていた父が養子に入り、２代目となる。その看板を市村さんの兄が次ぎ、一方の市村さんは大学卒業に大手スーパーに就職。精肉コーナーの担当となった。しかし、兄は不動産と飲食店の経営に進路変更。市村さんが４代目として後継の道を歩む。

　売り方や鮮度管理など、スーパーでのノウハウを身に着けていたので、父からは自由に仕事を任された。当時は町の再開発が始まった頃で、工事現場が多いためお弁当の売れ行きは上々。豊洲市場の移転も後押しした。反面、近隣には大型スーパーができて厳しさもあった。

　しかし、高層マンションが次々と建つなど、人口が増加するにつれてお店の周辺は新しい可能性が増えてきた。近隣にはバーベキュー場があり、週末になると準備のために買い物に来るお客が目立つようになった。

メディアに紹介された揚げ物は人気で、金曜日はコロッケとメンチを60円で販売する

金曜日メンチ60円

　新店舗は以前に比べてコンパクトになったため、品ぞろえは売れ筋のものに絞った。内臓肉などスペースの都合で陳列する品目が縮小した分、質の向上を意識した。和牛はすき焼きやステーキ、焼肉を。茨城県産の豚肉は生姜焼きやカレーに。鶏肉はブランド「桜姫」が売り場を飾る。その他、挽肉や切り落としなど、普段の晩御飯メニューからちょっと贅沢な一品に至るまで、ニーズの高いものを用意。お客にとっても選びやすい品ぞろえになっている。平日は豚肉、鶏肉が、週末は牛肉が売れ筋だ。

　揚げ物も好評を得ており、毎週金曜日限定でコロッケとメンチは１個60円で販売していることがテレビやネットで紹介されてから、さらにファンが増加した。新店舗は外からでも揚げ物のショーケースや厨房で揚げている様子が見えるため、気軽に買える雰囲気ができているようだ。

　市村さんが研究を重ねた手作りのお弁当も人気の柱の一つ。お昼時には日替わり弁当を毎日買いに来る常連客が多い。ハンバーグやヒレカツ、カルビなど、精肉店のお肉の美味しさを生かしたメニューは10種類以上あり、どれも手ごろな価格に。

　移転をしてから飲食店への納めをやめ、精肉の品数を減らしたことで、業績に不安があったが、揚げ物やお弁当がそれを払しょくしてくれたようだ。

ショーケースがコンパクトになった分、商品を厳選して並べている

◇
　「今があるのも、組合の青年部があったから」と、市村さんは語る。お店の責任を背負うようになった青年期、自身の立場や仕事について悩みを抱えていたら、同世代の同業者も同じような悩みを抱えていた。本音で話せる仲間を得て、様々な相談をしたり、商品の試食会をしたりと、切磋琢磨していた日々。広く交流を持つ大切さを学んだ市村さんは、当組合だけでなく、全国の同業者とも積極的に縁を結んで見聞を広めていった。こうした経験と多くの人たちとの交流が、今日のお店の発展の礎となっているようだ。

　「不器用だから、誠実にやっていくよう心がけています」

　その不器用さが、市村さんとお店の魅力に味を持たせ、多くのお客を惹きつけ、好条件の移転のような強運を呼び寄せたのかもしれない。

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