おいしくお肉を食べようよ！お肉屋さん紹介『（有）斉藤肉店』

（有）斉藤肉店

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写真入りのお弁当メニューで彩られた店舗前で左から坂下弘二社長、千早さん、華さん、人英さん

　店頭には種類豊富なお弁当メニューが、写真入りで掲示してある。お昼時になれば、㈲斉藤肉店（坂下弘二社長、練馬区豊玉中）には近隣のお客が次々と。それだけでなく、注文を受けて配達するお弁当の数は、それをさらに上回る。精肉店が作るお肉の惣菜が入ったお弁当だから美味しい。それが人気の大きな理由だが、お弁当の中には彩りを眺めただけでは見えてこない、様々な奮闘と創意工夫が詰まっている。

店主より一言

店舗情報

連絡先	TEL：03-3993-4129 FAX：03-3948-5840
住所	〒176-0013　練馬区豊玉中３－２５－４
URL	https://www.instagram.com/obento_sakashita/

店舗PR、お知らせなど

お弁当の種類は豊富で味も価格も良し

　ロケの撮影所へ、近隣の役所や警察署へ、お弁当の配達。その後は店頭に一般のお客が。朝から仕込んだお弁当は、慌ただしく次々とさばかれていく。企業や病院など得意先は多く、お店で使う携帯電話の電話帳には２０００件以上も登録されているほど。普段は約３００個を手がけるが、イベントなどで注文が入ると前日の夜から準備をして、一日中お弁当作りに追われるほどの量になる。

　一番人気は、焼肉とから揚げを詰めた「焼きから弁当」。トンカツや生姜焼きなど定番のほか、カツ丼やステーキ重のようにお肉の美味しさを前面に出した物が人気に。最近は唐揚げが特に売れ筋となっている。どれも価格が手頃なのも人気の秘密だ。

　ドラマの撮影現場などでは、ロケ弁やケータリングとして同店の味が親しまれている。肉料理のメニューは満足感が高いと好評で、同業他社がいるにもかかわらず、「ガッツリ食べるなら、坂下さん」と喜ばれている。

お弁当は日替わりや定番まで幅広い

スーパーの進出で

　もちろん、同店の始まりは精肉店だ。父が昭和33年に開業し、時代の勢いも得て事業を拡大。練馬駅前などに３店舗も展開するほどに繫盛した。坂下さんも他店で修行の後、昭和55年からお店で腕を振るい始める。しかし、大型スーパーが進出してから風向きが変わり、業績に打撃を受けた。

　事態を打開しようと、母がお弁当の販売を提案する。当時は精肉店がお弁当を扱うことは少なかったが、「ほか弁」が流行りだしたこともあり挑戦。お肉を売りにしたお弁当メニューを開発し、もともと評判の良かった揚げ物をはじめとする惣菜類もお弁当に詰めた。坂下さんもアルバイトで磨いた料理の腕を振るった。

　店頭販売が好調なところへ、父の友人からの縁で映画撮影の現場へお弁当を納めることに。やがて撮影現場で評判となり、口コミでテレビのキー局や映像制作会社などからも注文が。撮影の日には一日に４０００個ものお弁当を作ることもあった。

　コロナ禍の影響で撮影が減少したため、お弁当の売れ行きも振るわない時期が。しかし、テレワークなどが普及したことで、近隣から新規の顧客が増加。コロナ禍でのニーズをつかんでメニューも価格も様々に思案し、幅広い層のお客の心をつかんだ。

最近は上質な精肉のニーズの高まりを実感

やはり肉屋だから

　これほどまでにお弁当が大ヒットした斉藤さんの次の目標は、「やはり肉屋なんだから、もう一回お肉を売ろう」だ。

　手応えはある。ことし２月の「すき焼きの日」で、上質な牛肉を用意。予約を取って販売すると売り切れるほどに。地域の建設会社の社長からは、焼肉用の注文を頻繁に受けるだけでなく、ステーキ肉が一度に20枚も売れたことも。クリスマスにはローストチキンが好評で、購入したその場で次の年の予約をする常連客が。

　「いい肉を食べたいというお客が多い」との実感は強い。

　そのために、コンサルタントの助言を受けながら店舗運営の改革に着手。まずは店内を徹底的に清潔に。電子決済を導入し、若い層を獲得。ＳＮＳでお弁当のメニューを発信し、ファンを集めている。お弁当の原価率も見直した。

　精肉は銘柄の牛・豚・鶏で勝負をかけ、販売日を決めて予約制で展開。イベントを企画し、さらに需要喚起をして精肉をしっかりとした売上の柱にと構想を練る。

　こうした実践の中にあるのは「安い物で勝負するな。高い物を高く売れるように。儲けを出して、そのお客をつかむように」とのコンサルタントからの言葉だ。実際に結果が出てきており、クレジットカードや電子決済をするお客は、上質な物が欲しいとの意識が強く、値上げも気にしていないことが多い。

　さらに売上の柱としているのが学校給食だ。地域の学校や幼稚園などに納めもしているが、今後はさらに拡大をと意欲を見せる。

◇

　お店は昨年60周年を迎えた。息子の人英さんが先頭となってお店を切り盛りし、娘の華さんも配達に励むなど、それぞれに後継の道を歩む。その姿に坂下さんは「自分の代で店を閉めるというわけにはいかない。だから、楽しく仕事をしなくちゃ」と、妻・千早さんと朗らかに笑顔を交わしながら決意を新たにした。

【「東京食肉新報」2023年（令和5年）３月号掲載】

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