サイトウ精肉店
24年11月に自宅を改装して移転した新しい店舗で右から妻・宏子さん、斉藤弥太郎さん、智成さん、智成さんの妻・智美さん
「一生に三度も店を出した人は、足立区ではいないだろう」と豪語するのは、サイトウ精肉店(足立区島根)の斉藤弥太郎さん。昨年11月にそれまでの店舗から移転し、自宅を改装して新たに開店した。84歳になってもさらなる一歩を踏み出したのは、地域のお客を大事にしていることに加え、後継の智成さん夫婦の未来への道を開くためでもある。
「一生に三度も店を出した人は、足立区ではいないだろう」と豪語するのは、サイトウ精肉店(足立区島根)の斉藤弥太郎さん。昨年11月にそれまでの店舗から移転し、自宅を改装して新たに開店した。84歳になってもさらなる一歩を踏み出したのは、地域のお客を大事にしていることに加え、後継の智成さん夫婦の未来への道を開くためでもある。
店主より一言
店舗情報
連絡先 |
TEL:03-3883-0920 FAX:03-3883-0920 |
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住所 | 〒121-0815 足立区島根3-24-18 |
店舗PR、お知らせなど
コロナ禍などで新装オープンまで困難を乗り越えたエピソードを語る斉藤弥太郎さん(右)
大通りから少し歩いた静かな路地に、新店舗はある。年季が入った家屋に、新しい機器と設備で固めた精肉店の構え。下町の住宅街の通りに、パッと目につきながらも風景に溶け込むかのような姿だ。ショーケースから作業場、冷蔵庫まで、すべてが新しく、光沢を放っている。衛生管理だけではない清潔さも心地よい。
実は昨年9月完成予定だった。コロナ禍で建築業者の事情で作業に遅れが。店舗奥から冷蔵庫、スライサー、フライヤー、ショーケースと搬入したが、設備上の問題が生じるなどして、作業日程が次々とずれ込んだ。
さらに難儀をしたのが保健所からの指摘だった。壁はステンレスに。冷蔵庫は以前の店舗のものより大きく。流しは全自動に。床は排水を良く。温度計と湿度計の設置。精肉の扱いは手袋を使用。旧店舗では経験したことのないような多くの指摘に戸惑いながら、一つひとつ取り組んで検査をクリアした。
「いい肉」の語呂も良く、11月29日に新装オープン。しかし、看板が間に合わないままだった。その代わり、店舗前には多くのお祝いの花で満たされた。
「あとは、二人で仲良くやってくれれば」と、斉藤さんは智成さん、智美さん夫婦に笑顔を向ける。
実は昨年9月完成予定だった。コロナ禍で建築業者の事情で作業に遅れが。店舗奥から冷蔵庫、スライサー、フライヤー、ショーケースと搬入したが、設備上の問題が生じるなどして、作業日程が次々とずれ込んだ。
さらに難儀をしたのが保健所からの指摘だった。壁はステンレスに。冷蔵庫は以前の店舗のものより大きく。流しは全自動に。床は排水を良く。温度計と湿度計の設置。精肉の扱いは手袋を使用。旧店舗では経験したことのないような多くの指摘に戸惑いながら、一つひとつ取り組んで検査をクリアした。
「いい肉」の語呂も良く、11月29日に新装オープン。しかし、看板が間に合わないままだった。その代わり、店舗前には多くのお祝いの花で満たされた。
「あとは、二人で仲良くやってくれれば」と、斉藤さんは智成さん、智美さん夫婦に笑顔を向ける。
プライスカードにはかわいいイラストとひらがなで表記
父の背中を追って
今後の目標を「地域の人に愛される肉屋になりたい」と智成さん。真新しい店舗を舞台に、今までの積み重ねを大事にしながら、自分らしいお店作りを模索する。
高品質な精肉は言うまでもない。牛肉は黒毛和牛の一級品。豚肉はもち豚で、鶏肉も用意。常連客からの「お肉屋さんのお肉は美味しい」との喜びの声が力になっている。近隣には大手スーパーがありながら、お肉だけは同店で買うというお客も多い。また、学校給食や飲食店など、信頼があるからこその取引先も複数持つ。
ショーケースのプライスカードも、お客を引き付ける一工夫が。牛・豚・鶏のかわいいイラストに、商品名は丸みを帯びたひらがなで書いてある。揚げ物やサラダなどの惣菜類も同様にコロッケや野菜のイラストが描かれ、まるでゆるキャラのグッズが並んでいるかのような、親しみやすさがある。
「ひらがなだと小さい子が読んでいくんです。褒めてあげると、全てのカードを読んだりして」
商品力だけでなく、お店自体に、斉藤さん一家の人柄に魅かれる。近隣にライバルが多い地域にもかかわらず、長年にわたり繁盛を続けてきた要因がこうしたところにあるようだ。
「やり方は違いますが、とにかく父に追いつかなければ」と、智成さんは意気込む。
今後の目標を「地域の人に愛される肉屋になりたい」と智成さん。真新しい店舗を舞台に、今までの積み重ねを大事にしながら、自分らしいお店作りを模索する。
高品質な精肉は言うまでもない。牛肉は黒毛和牛の一級品。豚肉はもち豚で、鶏肉も用意。常連客からの「お肉屋さんのお肉は美味しい」との喜びの声が力になっている。近隣には大手スーパーがありながら、お肉だけは同店で買うというお客も多い。また、学校給食や飲食店など、信頼があるからこその取引先も複数持つ。
ショーケースのプライスカードも、お客を引き付ける一工夫が。牛・豚・鶏のかわいいイラストに、商品名は丸みを帯びたひらがなで書いてある。揚げ物やサラダなどの惣菜類も同様にコロッケや野菜のイラストが描かれ、まるでゆるキャラのグッズが並んでいるかのような、親しみやすさがある。
「ひらがなだと小さい子が読んでいくんです。褒めてあげると、全てのカードを読んだりして」
商品力だけでなく、お店自体に、斉藤さん一家の人柄に魅かれる。近隣にライバルが多い地域にもかかわらず、長年にわたり繁盛を続けてきた要因がこうしたところにあるようだ。
「やり方は違いますが、とにかく父に追いつかなければ」と、智成さんは意気込む。
時代を感じる開店当時のチラシが店頭に
繁盛には気配りが
店舗正面の窓ガラスには、同店の大売り出しのチラシが掲げられている。昭和42年と昭和63年の開店を記念したもので、お店の歴史を物語るものとしてお客とのコミュニケーションに一役買っている。書かれている旧仮名遣いや当時の商品の価格など、興味は尽きない。同時に、14歳から84歳の今まで、斎藤さんのお肉屋人生を物語るものでもある。
戦後の困難な時代、母を楽にするため中学を卒業後に鮮魚店へ。酷いしもやけに悩まされ、近所の精肉店の従業員の勧めで精肉店に。昭和42年に開業した同地で業績を伸ばし、昭和63年に大通りから少し路地に入った前店舗へ移転。区画整理で立ち退きとなり、今回の新店舗のオープンとなった。
その間、仕事を通して業務内容はもちろん、食肉業界の仕組み、人付き合いなど、さまざまに酸いも甘いも学んだ。そこから大事にしているのは、縁する人たちへの「気配り」。お店に来るお客はもちろん、多彩な分野で触れ合った人たちが喜んでくれるようプレゼントをしたり、励ましの言葉を送ったり。それが70年にもわたり精肉店を続けられた秘訣のようだ。
「正直者は遠回りする。だけど、その方が良い」
「良いことも、嫌なことも、一度経験しないと次のステップに行けないね」
「人間、本当に苦労すると、良いアイデアを出すんだよ」
「子どもがお使いに来てお金が足りない時は、絶対取っちゃダメ。正直な子なら家に帰って話すし、利口な親なら電話をかけてくる。それで信頼が増す。10円、20円、儲けたって仕方ない」
「相手の負担を軽くしてあげるんだ。『カレー5人分で300g』と言ってきたら、『200gで十分』と少なめに言うと必ず400g買う。心理作戦も必要だね」
自身の経験から、教訓のような言葉が次々と。斉藤さんが智成さんに伝えようとしているのは、お店だけでなく経験による時代の荒波を乗り越える知恵なのかもしれない。
「東京食肉新報」2024年(令和6年)2月号掲載
前店舗の内容はこちら
店舗正面の窓ガラスには、同店の大売り出しのチラシが掲げられている。昭和42年と昭和63年の開店を記念したもので、お店の歴史を物語るものとしてお客とのコミュニケーションに一役買っている。書かれている旧仮名遣いや当時の商品の価格など、興味は尽きない。同時に、14歳から84歳の今まで、斎藤さんのお肉屋人生を物語るものでもある。
戦後の困難な時代、母を楽にするため中学を卒業後に鮮魚店へ。酷いしもやけに悩まされ、近所の精肉店の従業員の勧めで精肉店に。昭和42年に開業した同地で業績を伸ばし、昭和63年に大通りから少し路地に入った前店舗へ移転。区画整理で立ち退きとなり、今回の新店舗のオープンとなった。
その間、仕事を通して業務内容はもちろん、食肉業界の仕組み、人付き合いなど、さまざまに酸いも甘いも学んだ。そこから大事にしているのは、縁する人たちへの「気配り」。お店に来るお客はもちろん、多彩な分野で触れ合った人たちが喜んでくれるようプレゼントをしたり、励ましの言葉を送ったり。それが70年にもわたり精肉店を続けられた秘訣のようだ。
「正直者は遠回りする。だけど、その方が良い」
「良いことも、嫌なことも、一度経験しないと次のステップに行けないね」
「人間、本当に苦労すると、良いアイデアを出すんだよ」
「子どもがお使いに来てお金が足りない時は、絶対取っちゃダメ。正直な子なら家に帰って話すし、利口な親なら電話をかけてくる。それで信頼が増す。10円、20円、儲けたって仕方ない」
「相手の負担を軽くしてあげるんだ。『カレー5人分で300g』と言ってきたら、『200gで十分』と少なめに言うと必ず400g買う。心理作戦も必要だね」
自身の経験から、教訓のような言葉が次々と。斉藤さんが智成さんに伝えようとしているのは、お店だけでなく経験による時代の荒波を乗り越える知恵なのかもしれない。
「東京食肉新報」2024年(令和6年)2月号掲載
前店舗の内容はこちら
素材の味が生きた塩・豚肉じゃが
シンプルな塩の味付けで素材の味を楽しめる肉じゃが
牛肉たっぷり「ハッシュドビーフ」
簡単なのに、牛肉もご馳走感もたっぷり
ローストビーフ・サラダ
見た目が華やかでヘルシー感もあるのにご飯にも合うローストビーフ
骨付き豚バラのキムチ鍋
豚肉の骨から出汁が出てコクと旨味がじゃがいもに染み込むキムチ風の肉じゃが
野菜たっぷりのハンバーグシチュー
ハンバーグだけでなく、たっぷりな野菜も楽しめる煮込みシチュー
ローストチキン
クリスマスの定番。ひと手間かけて丸鶏を美味しく
ビーフかつめし
ビーフの薫り高いカツにデミグラスソースが決め手
チーズ入り鶏むね肉唐揚げ
むね肉にチーズを加えて旨味を追加したから揚げ