なりきや精肉店
屋号の看板が目を引く店頭で右から田中秀明さん、妻・昌江さん、秀雄さん
木目のきれいな一枚板に、柔らかく親しみの持てる筆致で「なりきや」の文字が躍る。知人の書家により書かれたもので、28年前の店舗改装の折に新しく掲げた看板だ。なりきや精肉店(田中秀雄社長・北区西ヶ原)の店頭を彩る看板が光沢を持って新しく見えても、屋号自体はことしで95年もの歳月を積み重ね、いぶし銀のような輝きを放っている。
木目のきれいな一枚板に、柔らかく親しみの持てる筆致で「なりきや」の文字が躍る。知人の書家により書かれたもので、28年前の店舗改装の折に新しく掲げた看板だ。なりきや精肉店(田中秀雄社長・北区西ヶ原)の店頭を彩る看板が光沢を持って新しく見えても、屋号自体はことしで95年もの歳月を積み重ね、いぶし銀のような輝きを放っている。
店主より一言
店舗情報
営業時間 | 10:00~19:30(日曜日定休) |
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連絡先 |
TEL:03-3910-7329 FAX:03-3949-1129 |
住所 | 〒114-0024 北区西ヶ原1-55-9 |
店舗PR、お知らせなど
店頭の揚げ物はテレビや雑誌など多くのメディアで紹介されている
片側2車線で車通りが多い本郷通りをJR駒込駅から歩いて来ると、3~4メートルの道幅の霜降銀座商店街が現れる。現代的な街並みから、一気に昭和の下町を色濃く残す路地へ。両者の雰囲気とのギャップが印象的だ。少し入ったところで、コロッケやメンチを売り込む4代目の田中秀明さんの声が店頭のスピーカーから聞こえてきた。
メンチなどが評判となって、今ではテレビの散歩番組が毎年1~2回入り、商店街のアピールと繁栄にも貢献。さらに秀明さんは商店会の副会長の重責も担う。同店が長年にわたり商店街に根差してきたことと、地域に愛されている証でもある。
留学を機に英国へ
大工を目指していたという初代の輝吉さんが大正13年に開業。精肉店の第一歩を記したのは田端だった。屋号は出身地の「成田」と、名前の「輝」から一字ずつ取り、「ナリキヤ精肉店」に。業績を伸ばして2代目の叔父・栄二さんが跡を継ぎ、父・秀雄さんが昭和39年に支店だった現在の駒込の店舗に活躍の場を得た。兄弟で切磋琢磨していたが、栄二さんが平成20年に体調不良で引退。秀雄さんが屋号を受け継ぎ3代目に。その影響は秀明さんにも大きく及んだ。
昭和59年から別の叔父が持つお店を手伝っていた秀明さんは、第1回食肉交換留学生として2か月間、オーストラリアへ。そこで英語に目覚めたことをきっかけに英国へ飛び、旅行会社の勤務を経てフリーで旅行代理店を運営していた。充実の日々を過ごしている中、初めに勤めたお店の叔父が入院。お店の状況を良く知る秀明さんが必要になり、秀雄さんからの要請で帰国した。
「生まれながらの肉屋」なので、知識や技術は秀雄さんから学び、他店への修行は必要ないほど自然と身に付いていった。加えて、肉の切り方や並べ方など独学を重ね、26歳の時に公団住宅内の店舗を借りて独立。一族で展開する精肉店の5店舗目となった。その間、本店と自身の店と行き来をしながら腕を振るったが、公団住宅の建て直しをきっかけに本店へ戻る。14年前の結婚を機にお店を任され、創意工夫を重ねてお店の舵取りをしている。
メンチなどが評判となって、今ではテレビの散歩番組が毎年1~2回入り、商店街のアピールと繁栄にも貢献。さらに秀明さんは商店会の副会長の重責も担う。同店が長年にわたり商店街に根差してきたことと、地域に愛されている証でもある。
留学を機に英国へ
大工を目指していたという初代の輝吉さんが大正13年に開業。精肉店の第一歩を記したのは田端だった。屋号は出身地の「成田」と、名前の「輝」から一字ずつ取り、「ナリキヤ精肉店」に。業績を伸ばして2代目の叔父・栄二さんが跡を継ぎ、父・秀雄さんが昭和39年に支店だった現在の駒込の店舗に活躍の場を得た。兄弟で切磋琢磨していたが、栄二さんが平成20年に体調不良で引退。秀雄さんが屋号を受け継ぎ3代目に。その影響は秀明さんにも大きく及んだ。
昭和59年から別の叔父が持つお店を手伝っていた秀明さんは、第1回食肉交換留学生として2か月間、オーストラリアへ。そこで英語に目覚めたことをきっかけに英国へ飛び、旅行会社の勤務を経てフリーで旅行代理店を運営していた。充実の日々を過ごしている中、初めに勤めたお店の叔父が入院。お店の状況を良く知る秀明さんが必要になり、秀雄さんからの要請で帰国した。
「生まれながらの肉屋」なので、知識や技術は秀雄さんから学び、他店への修行は必要ないほど自然と身に付いていった。加えて、肉の切り方や並べ方など独学を重ね、26歳の時に公団住宅内の店舗を借りて独立。一族で展開する精肉店の5店舗目となった。その間、本店と自身の店と行き来をしながら腕を振るったが、公団住宅の建て直しをきっかけに本店へ戻る。14年前の結婚を機にお店を任され、創意工夫を重ねてお店の舵取りをしている。
松坂牛のほか、品質を重視した精肉がそろう
環境が変わる商圏
その舵取りが、最近は難しい。お客は高齢化し、若い主婦は働きに出て昼間はいない。販売の時間帯を考慮する必要が出てきた。また、駒込の特殊性として下町と山の手の境に位置する地域のため、どちらの客層を狙うか悩ましい。しかも商店街にはスーパーが4軒もある。こうした環境下を「商売が面白いところ」と秀明さんは時代に合った商品の開発と充実、売り出しなどのイベントと、次々と企画を打ち出している。
まずは満足感の高い精肉だ。松坂牛や霧島豚など上質な銘柄の精肉をそろえるが、味本位で選び、信頼の厚い問屋のお勧めのものも。キメの細かさや香りなどを見て、さらに爪で脂を引っかいて舐めてみる吟味の仕方は、叔父の見よう見まねで身に付けた。「良いものは期待を裏切らない」の信念でお客の期待に応えられる品ぞろえを心がける。
こうした上質の精肉から出来上がる惣菜類は、揚げ物を中心として幅広く人気がある。料理番組で気になったものをアレンジしてお店の味に。自宅で食べていたものに磨きをかけて、商品化したものも多くある。何かに特化したものでなく、万人受けする「定番のおかず」であることを目指す。
前面に押し出す商品の一つに「プレミアム焼豚」がある。金・土曜日限定販売で、銘柄豚のロースを使用したこだわりの一品だ。ある年の年末に残った豚肉で作り、なりきや一族で試食したところ、プロの舌でも好評を得たため店頭に並ぶことに。
トンカツは従来の豚肉からグレードアップし、夏場の目玉商品に。さらに、季節を意識して夏場は焼き肉用の牛肉をそろえるなど、需要喚起とアイデアをひねりだす努力に余念がない。
その舵取りが、最近は難しい。お客は高齢化し、若い主婦は働きに出て昼間はいない。販売の時間帯を考慮する必要が出てきた。また、駒込の特殊性として下町と山の手の境に位置する地域のため、どちらの客層を狙うか悩ましい。しかも商店街にはスーパーが4軒もある。こうした環境下を「商売が面白いところ」と秀明さんは時代に合った商品の開発と充実、売り出しなどのイベントと、次々と企画を打ち出している。
まずは満足感の高い精肉だ。松坂牛や霧島豚など上質な銘柄の精肉をそろえるが、味本位で選び、信頼の厚い問屋のお勧めのものも。キメの細かさや香りなどを見て、さらに爪で脂を引っかいて舐めてみる吟味の仕方は、叔父の見よう見まねで身に付けた。「良いものは期待を裏切らない」の信念でお客の期待に応えられる品ぞろえを心がける。
こうした上質の精肉から出来上がる惣菜類は、揚げ物を中心として幅広く人気がある。料理番組で気になったものをアレンジしてお店の味に。自宅で食べていたものに磨きをかけて、商品化したものも多くある。何かに特化したものでなく、万人受けする「定番のおかず」であることを目指す。
前面に押し出す商品の一つに「プレミアム焼豚」がある。金・土曜日限定販売で、銘柄豚のロースを使用したこだわりの一品だ。ある年の年末に残った豚肉で作り、なりきや一族で試食したところ、プロの舌でも好評を得たため店頭に並ぶことに。
トンカツは従来の豚肉からグレードアップし、夏場の目玉商品に。さらに、季節を意識して夏場は焼き肉用の牛肉をそろえるなど、需要喚起とアイデアをひねりだす努力に余念がない。
松坂牛と上質な国産牛で作ったメンチカツが評判
◇
こうした取り組みの結晶とも言えるのが、同店の名物「松坂牛メンチ」だ。肉本来の味を出すため原材料にこだわり、松坂牛と上質の和牛を使用。「初めはそのままで、次に塩だけで」と、秀明さんは味に自信を持った食べ方を勧める。
近隣のスーパーが格安にもかかわらず、コロッケは子供を中心にファンが多い。「炒めた脂の味がジャガイモに染み込んだ化学反応が人気の秘密」と胸を張る。
「食べてもらうものだから、お客さんに喜んでもらえるよう鮮度も接客も気を使います」と妻・昌江さん。味もさることながら、こうした思いが長年にわたり常連客の心をつかんで来たのだろう。創業100年は目前だ。
【「東京食肉新報」2019年(令和元年)9月号掲載】
こうした取り組みの結晶とも言えるのが、同店の名物「松坂牛メンチ」だ。肉本来の味を出すため原材料にこだわり、松坂牛と上質の和牛を使用。「初めはそのままで、次に塩だけで」と、秀明さんは味に自信を持った食べ方を勧める。
近隣のスーパーが格安にもかかわらず、コロッケは子供を中心にファンが多い。「炒めた脂の味がジャガイモに染み込んだ化学反応が人気の秘密」と胸を張る。
「食べてもらうものだから、お客さんに喜んでもらえるよう鮮度も接客も気を使います」と妻・昌江さん。味もさることながら、こうした思いが長年にわたり常連客の心をつかんで来たのだろう。創業100年は目前だ。
【「東京食肉新報」2019年(令和元年)9月号掲載】
素材の味が生きた塩・豚肉じゃが
シンプルな塩の味付けで素材の味を楽しめる肉じゃが
牛肉たっぷり「ハッシュドビーフ」
簡単なのに、牛肉もご馳走感もたっぷり
ローストビーフ・サラダ
見た目が華やかでヘルシー感もあるのにご飯にも合うローストビーフ
骨付き豚バラのキムチ鍋
豚肉の骨から出汁が出てコクと旨味がじゃがいもに染み込むキムチ風の肉じゃが
野菜たっぷりのハンバーグシチュー
ハンバーグだけでなく、たっぷりな野菜も楽しめる煮込みシチュー
ローストチキン
クリスマスの定番。ひと手間かけて丸鶏を美味しく
ビーフかつめし
ビーフの薫り高いカツにデミグラスソースが決め手
チーズ入り鶏むね肉唐揚げ
むね肉にチーズを加えて旨味を追加したから揚げ