2021/6/18
HACCP衛生管理 今月から完全実施
取り組み方は「今まで通り」
基本的な衛生管理は今まで通りと、切る物ごとにまな板や包丁を分けた精肉の作業場を説明する布川勝一さん
昨年に施行された「HACCPに沿った衛生管理の制度化」が1年間の経過措置を経て、今月1日から完全実施になった。国際化の進展や食品の安全確保など、食を取り巻く環境の変化に対応するために行われ、食肉販売業でもそれに即した衛生管理が必要となる。衛生管理の趣旨をまとめ壁掛け用のボードをはじめ、最近では衛生管理の点検用カレンダーなど、当組合を通じて組合員に配付したが、まだ実践の仕方などへの戸惑いの声は多い。制度化へ様々に尽力した布川勝一さん(大田区支部・㈱三喜屋の牛肉)に、具体的な取り組み方を聞いた。
昨年に施行された「HACCPに沿った衛生管理の制度化」が1年間の経過措置を経て、今月1日から完全実施になった。国際化の進展や食品の安全確保など、食を取り巻く環境の変化に対応するために行われ、食肉販売業でもそれに即した衛生管理が必要となる。衛生管理の趣旨をまとめ壁掛け用のボードをはじめ、最近では衛生管理の点検用カレンダーなど、当組合を通じて組合員に配付したが、まだ実践の仕方などへの戸惑いの声は多い。制度化へ様々に尽力した布川勝一さん(大田区支部・㈱三喜屋の牛肉)に、具体的な取り組み方を聞いた。
――6月からハサップの考え方を取り入れた衛生管理が義務化されます。内容をいまいち理解できていないという声もありますので、「食肉販売HACCP憲章9ヶ条」と併せて解説を。
要はハサップの考えを取り入れた衛生管理です。ですから、普段やっている衛生管理をメインに計画を立てて、実行し、記録を付けていく。それだけのことです。皆さん、ちょっと難しく考えてしまっていますね。
「9ヶ条」について、「整理、整頓、清掃、清潔、習慣」(1条)は、すでに保健所から指導されていますし、「施設・設備の衛生管理」(2条)も「手洗いの実施」(4条)もマニュアルがあります。「従業員の健康管理」(3条)はコロナ以前の問題ですが、手を切った場合はしっかり絆創膏と手袋をして作業するなどの意識も大事です。
「原材料の受け入れの確認」(5条)は仕入れた中身が違ったり、フタが開いていたり、冷凍が半分溶けていたりと、注意が必要です。「汚染の防止」(6条)は、例えば豚と鶏など別の肉が混ざらないように意識すること。他にも無添加のハムとそうでないものが重なってしまうと無添加の方まで汚染されて、アレルゲンに影響が出てしまう。「器具の洗浄」(8条)は、使ったトングは使い終わるたびに洗うなど、「最後にやればいい」というのではなく徹底して実践していく必要がります。
「冷蔵庫等の温度管理」(7条)は一番簡単。9条も同じです。冷蔵庫は0・1℃単位で表示されるので、毎日それを記していきます。うちの店では冷蔵庫が4つあり、1年前からそれぞれ分けて記録しています。記録は一つで良いのですが、保健所からは分けるよう指導がありました。
――小売店・惣菜・卸業と、業態ごとに気を付けるポイントはありますか。
精肉のみの場合は一般の衛生管理計画書を、惣菜を扱うなら温度管理などを入れた重要管理計画書を作る必要があります。食品衛生協会と全肉生連それぞれの記録簿を見て、中身が同じでどちらをやれば良いのかという問い合わせが結構来ます。
まずは継続することです。朝はまず冷蔵庫の温度を見て確認したら、その場で書き込む。そうしたことが一番重要でないでしょうか。あとはやっていくといろいろありますので、事細かに書いておけば問題ないです。これは問題があった時にチェックするものなので、あまりチェックがないと疑われるから、何でも書いた方がいいです。何か見つけるようにすると、書くのが楽しくなってきます。
スマホやパソコンで無料のアプリもあり、得意ならその方が良いでしょう。ただ、忘れやすいので、手で書いた方が良いと思います。
面倒なのは、日々の記録より計画書。しかし1回作ってしまえば、変更がない限り1年間使えます。
要はハサップの考えを取り入れた衛生管理です。ですから、普段やっている衛生管理をメインに計画を立てて、実行し、記録を付けていく。それだけのことです。皆さん、ちょっと難しく考えてしまっていますね。
「9ヶ条」について、「整理、整頓、清掃、清潔、習慣」(1条)は、すでに保健所から指導されていますし、「施設・設備の衛生管理」(2条)も「手洗いの実施」(4条)もマニュアルがあります。「従業員の健康管理」(3条)はコロナ以前の問題ですが、手を切った場合はしっかり絆創膏と手袋をして作業するなどの意識も大事です。
「原材料の受け入れの確認」(5条)は仕入れた中身が違ったり、フタが開いていたり、冷凍が半分溶けていたりと、注意が必要です。「汚染の防止」(6条)は、例えば豚と鶏など別の肉が混ざらないように意識すること。他にも無添加のハムとそうでないものが重なってしまうと無添加の方まで汚染されて、アレルゲンに影響が出てしまう。「器具の洗浄」(8条)は、使ったトングは使い終わるたびに洗うなど、「最後にやればいい」というのではなく徹底して実践していく必要がります。
「冷蔵庫等の温度管理」(7条)は一番簡単。9条も同じです。冷蔵庫は0・1℃単位で表示されるので、毎日それを記していきます。うちの店では冷蔵庫が4つあり、1年前からそれぞれ分けて記録しています。記録は一つで良いのですが、保健所からは分けるよう指導がありました。
――小売店・惣菜・卸業と、業態ごとに気を付けるポイントはありますか。
精肉のみの場合は一般の衛生管理計画書を、惣菜を扱うなら温度管理などを入れた重要管理計画書を作る必要があります。食品衛生協会と全肉生連それぞれの記録簿を見て、中身が同じでどちらをやれば良いのかという問い合わせが結構来ます。
まずは継続することです。朝はまず冷蔵庫の温度を見て確認したら、その場で書き込む。そうしたことが一番重要でないでしょうか。あとはやっていくといろいろありますので、事細かに書いておけば問題ないです。これは問題があった時にチェックするものなので、あまりチェックがないと疑われるから、何でも書いた方がいいです。何か見つけるようにすると、書くのが楽しくなってきます。
スマホやパソコンで無料のアプリもあり、得意ならその方が良いでしょう。ただ、忘れやすいので、手で書いた方が良いと思います。
面倒なのは、日々の記録より計画書。しかし1回作ってしまえば、変更がない限り1年間使えます。
計画書には消毒や洗浄、温度チェックなど、具体的な実践項目が。同店では昨年から計画書を作成して取り組んでいる
――実際にこちらのお店では、どのような記録をしていますか。
手書きでメモをするような具合です。「手洗い」などもあります。惣菜については具体的に、作っているメンチカツ、から揚げ、ローストビーフについて「中心まで十分加熱する」くらいです。
――惣菜ごとに項目を作ってチェックしているのですか。
惣菜としてではなくお弁当の販売ですので、「お弁当」の項目だけです。お弁当の中の惣菜は、まとめて「お弁当」と一つで扱われるので、それぞれに項目を作る必要はありません。
他に記録していることは、「中身が違うので返品した」「トングが放置。洗い直し」「異物混入。コメに石が入っていた」「クレームの電話。マスク未着用」「毎月の害虫駆除」「高圧洗浄」というように、その日の出来事を記録しています。今後は習慣として、当たり前のようになるでしょう。あとは1年間保存することです。
――コロナの影響も含めて、消費者も衛生面についての意識が高くなりました。「おつりを触った手で、肉を触った」など。
その指摘もありました。現在の法律では手袋は必ずしもする必要はないものの、お客さんから「なぜ手袋しないんだ」と。スーパーの精肉部は手袋をしている代わり、おつりを触りません。衛生意識が高まった影響もあるかもしれませんが、現金を触らないのでキャッシュレス払いのお客さんも増えました。月末に現金がなくなると、使い始める傾向もあるようです。
――新しい設備を入れないと対応できないのでは、という声もありました。
従来のもので、特に問題はないです。ハードの面をそろえなくても、ソフトの面で自分に必要なものを深く。それで良いと思います。処理業なら従業員50人未満だと「小さな処理業」になるので、金属探知機などは必要ない。50人以上だと、もっと大変な作業が出てきます。
――今までの方法と設備で十分ということですね。
そうなのですが、計画書にたくさん盛り込んでしまうと、それに従わなくてはならなくなるので、何かあった時に保健所から注意されるかもしれません。
計画書は普段やっている実施項目にマルをしていきます。これを全部マルしていくと大変なので、自分でできる範囲でやって、あとは作文を書いていくような感じです。
――お店によっては独自の計画書を作ることも有効ですか。
自分で作るのは大変でしょうね。保健所から指摘されたことが出たら、それを付け加えればいいと思います。難しく書いてある「手引書」を先に手にしたから、神経質になっている人もいますが、お店に合った形でやればいいだけです。
――実際にこちらのお店では、どのような記録をしていますか。
手書きでメモをするような具合です。「手洗い」などもあります。惣菜については具体的に、作っているメンチカツ、から揚げ、ローストビーフについて「中心まで十分加熱する」くらいです。
――惣菜ごとに項目を作ってチェックしているのですか。
惣菜としてではなくお弁当の販売ですので、「お弁当」の項目だけです。お弁当の中の惣菜は、まとめて「お弁当」と一つで扱われるので、それぞれに項目を作る必要はありません。
他に記録していることは、「中身が違うので返品した」「トングが放置。洗い直し」「異物混入。コメに石が入っていた」「クレームの電話。マスク未着用」「毎月の害虫駆除」「高圧洗浄」というように、その日の出来事を記録しています。今後は習慣として、当たり前のようになるでしょう。あとは1年間保存することです。
――コロナの影響も含めて、消費者も衛生面についての意識が高くなりました。「おつりを触った手で、肉を触った」など。
その指摘もありました。現在の法律では手袋は必ずしもする必要はないものの、お客さんから「なぜ手袋しないんだ」と。スーパーの精肉部は手袋をしている代わり、おつりを触りません。衛生意識が高まった影響もあるかもしれませんが、現金を触らないのでキャッシュレス払いのお客さんも増えました。月末に現金がなくなると、使い始める傾向もあるようです。
――新しい設備を入れないと対応できないのでは、という声もありました。
従来のもので、特に問題はないです。ハードの面をそろえなくても、ソフトの面で自分に必要なものを深く。それで良いと思います。処理業なら従業員50人未満だと「小さな処理業」になるので、金属探知機などは必要ない。50人以上だと、もっと大変な作業が出てきます。
――今までの方法と設備で十分ということですね。
そうなのですが、計画書にたくさん盛り込んでしまうと、それに従わなくてはならなくなるので、何かあった時に保健所から注意されるかもしれません。
計画書は普段やっている実施項目にマルをしていきます。これを全部マルしていくと大変なので、自分でできる範囲でやって、あとは作文を書いていくような感じです。
――お店によっては独自の計画書を作ることも有効ですか。
自分で作るのは大変でしょうね。保健所から指摘されたことが出たら、それを付け加えればいいと思います。難しく書いてある「手引書」を先に手にしたから、神経質になっている人もいますが、お店に合った形でやればいいだけです。
三喜屋の牛肉の実践
まな板も包丁も作業場も分けて基本を忠実に
衛生管理を意識できるよう、ボードや手洗いマニュアルなどがいつも目に入る位置に
お昼時にはお弁当を求める人たちが行列を作り、夕方には晩ご飯のおかずに精肉やハムを求める主婦が次々とお店を訪れる。右側に精肉を並べたショーケースを構え、左側に多彩なメニューを掲げたお弁当のカウンターを設置している同店では、1つで2つのお店を展開しているかのようだ。
裏の作業場に回れば、精肉とお弁当それぞれに作業場が壁で分けられている。一つの部屋を壁で隔てて2つの部屋を作ったかのような構造だ。双方を行き来する通路には、ビニールカーテンをかけて仕切る。壁には「HACCP憲章9ヶ条」「衛生管理はABCDEで!」のパネル。手洗用の洗面台にはイラストで説明した手洗いマニュアルも。いつでも目に付く位置に掲示し、作業中でも自然と衛生管理が意識できる環境にある。
「作業場は、精肉とお弁当は別々です。精肉を切るまな板も包丁も、切る肉ごとに分けて使います」と、衛生面に配慮した設備を説明する布川さん。精肉用には大きな作業台を2つそろえ、それぞれ背を向けるように作業するので、違う精肉が混在することはない。ビニール手袋も常備してあり、お客への衛生面の配慮ができる。
お昼時にはお弁当を求める人たちが行列を作り、夕方には晩ご飯のおかずに精肉やハムを求める主婦が次々とお店を訪れる。右側に精肉を並べたショーケースを構え、左側に多彩なメニューを掲げたお弁当のカウンターを設置している同店では、1つで2つのお店を展開しているかのようだ。
裏の作業場に回れば、精肉とお弁当それぞれに作業場が壁で分けられている。一つの部屋を壁で隔てて2つの部屋を作ったかのような構造だ。双方を行き来する通路には、ビニールカーテンをかけて仕切る。壁には「HACCP憲章9ヶ条」「衛生管理はABCDEで!」のパネル。手洗用の洗面台にはイラストで説明した手洗いマニュアルも。いつでも目に付く位置に掲示し、作業中でも自然と衛生管理が意識できる環境にある。
「作業場は、精肉とお弁当は別々です。精肉を切るまな板も包丁も、切る肉ごとに分けて使います」と、衛生面に配慮した設備を説明する布川さん。精肉用には大きな作業台を2つそろえ、それぞれ背を向けるように作業するので、違う精肉が混在することはない。ビニール手袋も常備してあり、お客への衛生面の配慮ができる。
衛生自主管理点検カレンダーはお弁当・精肉それぞれの作業場との通路にあり、すぐに手に取りやすい。毎日忘れずに記録できる
お弁当の作業場では、壁に沿うように炊飯器やフライヤーなどの厨房機器があり、お弁当を盛り付ける作業台は中央に設置。調理と盛り付けは分離した状態で作業を進めていく。揚げ物などの火の通り具合や異物の混入など、気を使うところだ。基本を忠実に、十分な衛生管理と調理で毎日多くのお弁当が作られている。
衛生管理の記録がしやすいように、双方の作業場の通路に「衛生管理自主点検カレンダー」を設置。すぐ手に取ることができる場所にあるので、記録の習慣付けがしやすそう。すぐにチェックやメモができ、毎日の動きが一目で把握するのに有効だ。
衛生管理の記録は、昨年から自主的に始めたという布川さん。「今までのやり方をしながら、こうしたグッズをうまく活用し、難しく考えないで良いと思います」と、HACCPに沿った衛生管理を意識しながらも普段通りであることを強調した。
お弁当の作業場では、壁に沿うように炊飯器やフライヤーなどの厨房機器があり、お弁当を盛り付ける作業台は中央に設置。調理と盛り付けは分離した状態で作業を進めていく。揚げ物などの火の通り具合や異物の混入など、気を使うところだ。基本を忠実に、十分な衛生管理と調理で毎日多くのお弁当が作られている。
衛生管理の記録がしやすいように、双方の作業場の通路に「衛生管理自主点検カレンダー」を設置。すぐ手に取ることができる場所にあるので、記録の習慣付けがしやすそう。すぐにチェックやメモができ、毎日の動きが一目で把握するのに有効だ。
衛生管理の記録は、昨年から自主的に始めたという布川さん。「今までのやり方をしながら、こうしたグッズをうまく活用し、難しく考えないで良いと思います」と、HACCPに沿った衛生管理を意識しながらも普段通りであることを強調した。
素材の味が生きた塩・豚肉じゃが
シンプルな塩の味付けで素材の味を楽しめる肉じゃが
牛肉たっぷり「ハッシュドビーフ」
簡単なのに、牛肉もご馳走感もたっぷり
ローストビーフ・サラダ
見た目が華やかでヘルシー感もあるのにご飯にも合うローストビーフ
骨付き豚バラのキムチ鍋
豚肉の骨から出汁が出てコクと旨味がじゃがいもに染み込むキムチ風の肉じゃが
野菜たっぷりのハンバーグシチュー
ハンバーグだけでなく、たっぷりな野菜も楽しめる煮込みシチュー
ローストチキン
クリスマスの定番。ひと手間かけて丸鶏を美味しく
ビーフかつめし
ビーフの薫り高いカツにデミグラスソースが決め手
チーズ入り鶏むね肉唐揚げ
むね肉にチーズを加えて旨味を追加したから揚げ